妄想乙

 何時ものようにお気に入りサイトを巡っていたら下半身から何時ものような欲情の気配が漂って来たので何時もの如く下腹部に手を伸ばしたら何故か頭に浮かんだのは、八汐先輩の顔だった。
「……え……いやいやいや、ありえんだろうJK、何で八汐先輩が……」
 その名前を口にした途端湿った股間がびくんと脈打って吃驚した人差し指が内側に入り込もうとするので慌てて手を引く。そこはまだ早い。つーか処女だし処女膜自慰で破れるとかそれなんてエロゲ状態だから指を挿れる時には慎重を期すべき。
「っは、どうせなら八汐先輩とメガネでの妄想がの、望ましい……ヘタレ攻めとか禿萌え……」
 どうせ見ているのは腐女子サイトだし萌えシチュを奴らに脳内補完計画とか余裕すぎて逆にありえんレベル。変態むっつりメガネが鬼畜と化して八汐先輩を押し倒してシャツを剥いた時点で何故か押し倒しているメガネが自分の顔に移り変わったので流石に我ながら引いた。
「……デュフ、何という猿並みの性欲……ふ、腐女子乙」
 どう考えても脳内は腐女子とは大分遠ざかっているけれどそんなことを考えてしまうのは照れ隠し以外の何物でもない。八汐先輩、八汐先輩、八汐先輩。心で呼べばそれだけ陰部をなぞる手の動きも早まってぐちゅぐちゅと割れ目が濡れ出す自分の身体が信じられない。猿過ぎる。しかもその手が八汐先輩だったら、なんて考えるのはどう足掻いても変態だし更に何時も八汐先輩に言われてるみたいに変態、なんて罵られる妄想が加速して止まらない。
 パソコンの画面はいけない。部屋を暗くしているから時折自分の顔が画面に映って誰だこのキモヲタ状態になるのだけは避けたい。のに、左手を局部に、右手でマウスを惰性で動かし続ける頬を紅潮させた女の顔がそこにはあって、誰だこれはああ私か、と頭の片隅で冷静に理解する。
 PC付けてオナった結果www そんなスレが立ちそうなレベルだった。
「っあ、ふ……や、八汐先輩、八汐先輩ぃ……八汐先輩の指きもちぃ……っとか自分、きもちわる……っ」
 どうにか冷静に戻る言葉を吐いてみてもハァハァ漏れる息は止まらずに寧ろ激しくなるばかりだったどころか喘ぎまでが零れるなんて、どれだけ独り上手が発達すれば気が済むのか私は。
 指が、八汐先輩の指が、濡れそぼった指が滑って尖った肉豆を摘むのがどれだけ卑猥なんだ。度重なる自慰で敏感になった私のクリを舐めるないや舐めて欲しいんだけど、なんて思いながら湿った手で弄るのが気持ち良すぎて止められない止まらない。えびせん以上。
「……ッウひ、っああクリ、く、クリチンポ、も、もっとしごいてっ……!」
 卑猥な単語を口走ると快楽が増すというのは本当だったらしい。そんな器官なんて私には付いてないのにそれが男性だと思ってしかもそれを八汐先輩にされていると思うと頭がくらくらする程にやばい、私こんなの知らない。
「ッア〜……っあ、くり、クリチンポいくっ、イクッ、……い、っイ、あ、ぁ……」
 自然前屈みになって顎をぶつけたキーボードに飽きっ放しの口から涎が垂れる。っあ、あはっ、と何だか壊れたような声が口から漏れてこんなの誰にも見せられないのに誰かに見て欲しかった。主に八汐先輩に。態と玄関のセキュリティを外しておいたのも不審に思って様子を見に来た八汐先輩に襲われたい、だなんて。
 私に乱暴する気でしょう、エロ同人みたいに! とか一生に一度言ってみたいセリフ、なのかどうか知らないが八汐先輩にあの冷めた目で見られて臭いと罵られながら犯されたい。ああ犯されたいとも。
「……っあ、ふぅ……八汐先輩の指ぬるぬる、とか……っはは、妄想乙」
 じっとり湿った下着の下でねっとり濡れた指が、ふやけた感触を自分で解る辺りに酷く虚しさを覚えて、これが所謂賢者モードかなどと考える程度には私も正常だった。多分。

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