浅葱色の夢を見る

 ふくりと膨れた胸の突起を指の腹で潰せば、ひくりと白い肢体が戦慄くのが可愛らしい。
「……っサル先輩、何でそこばっか……ッア、や、です……」
「何だ光秀、こういう時はイヤ、じゃなくて、イイ、って言うんだぜ?」
「な、なな、何を言ってやがるです!? い、良いとかそんな訳……ッアア、だから、何で胸ばっかり触るんです……ッ!?」
 良晴の腕の中で、明智光秀は必死に身を捩る。しかし執拗に乳首をこねくり回され、足掻く腕は無意味に空を泳ぐだけだった。
 良晴は胸中ほくそ笑む。口では文句を言いつつも、光秀の肉体は何時も従順である。こうして膝の上に座らせ、後ろから小振りの胸を弄ってやれば、その語尾はどうしようもなくとろけてしまっていた。
「胸ばっかって、胸以外も触って欲しいって?」
「っっ馬鹿なこと、言いやがるなで……っひゃぁ、あン、引っ張らないで、っあ……ひぃん……っ」
「ほら、おっぱいされるの好きなんじゃないか」
「ッア……あ、お、おっぱいとか……ふぁう、んっ……、そんなの、ぉ……」
「言ってみろよ、『おっぱいきもちいいです』ってな」
 揶揄うように言いやれば、腕の中の光秀はキッと唇を噛み締め良晴の顔を見上げやる。しかし何時も小馬鹿にしたようにこちらを見遣るその瞳が、今や眦を赤く染まり涙に潤んでいるのだから、堪ったものではなかった。
 胡坐を掻いた膝の上に座る光秀の、その尻に押し付けた股間が滾り出す。正確に言えば、膨らみ掛けた光秀の胸を揉み出した時から高揚の予兆はあったのだが、それは最早完全な形となって薄い布に覆われた光秀の臀部に押し付けられていた。
「そ、そんなの言えな……っあ、アア、そこ押し込んじゃダメ、ダメですって、ばっ、やぁぁ……ン、あ、あっ、い、イイ……っふあぁ……ん、」
「そうか、光秀は乳首押し込まれるの好きなのかぁ。やっぱ貧乳だと感度が良いって本当なのかな?」
 現代の世界で得たエロ本の知識で言ってみるも、何時もならば胸のサイズについて言及されれば酷く噛み付いて来る光秀は、ふぅ、くぅん、と甘い声を漏らすばかりだ。
 余程気持ちが良いのかと掌で潰さんばかりに揉みしだく。小さな光秀の膨らみは良晴の手にすっぽりと収まり、五本の指で順繰りに捏ね繰り回せば耐え切れないとばかりに肢体がのけ反った。
「ッアア、ぅ、ダメッ、だめぇ、ですぅ……っや、やぁ、っあん……い、や……っ」
「光秀ももっと素直になってみろって。嫌、じゃなくて、イイ、ってな」
「や、やだ、っやぁぁ、なの……っあ、ぁ!!」
「そうか嫌なのか、それなら仕方ないなぁ」
「っぇ、ふぅえ!?」
 ズボンの中で苦しいまでに張った下半身が解放を求める。それをどうにか宥めすかして、良晴は光秀の柔らかな胸部から手を離す。どうして、と言いたげに涙目で仰ぐ光秀に、胸中ほくそ笑みながら膝の上に乗せていた細い体を畳の上に下ろした。
「……っサル、先輩?」
「いやぁ、光秀がそんなに嫌がってるなんて知らなかったよ。悪かったな」
「っえ、えぇ、そんな……っ!?」
 ぺたりと畳に座り込んだ光秀は、それ以上何も言えずにふるふると身を震わせている。頑なに乱れまいと下半身の着物の裾を直そうとしても、その下で閉じた脚をもじもじと動かしているのでは、一層妄想力を掻き立てられるというものだ。
 掌で押さえつけている着物の裾とは裏腹に、その襟元は大きく肌蹴たままである。先ほどまで触れていた柔らかな膨らみが顕わに誘惑して来るのでは、お預けを決め込んだ良晴の方が我慢の限界を迎えそうだった。
(っあー……やべぇ何だこれ何だこの可愛さ、というかやっぱおっぱいはどんな大きさでもおっぱいなんだなあ、勝家くらい立派なのも揉みごたえあるけど、小さくてもおっぱいはおっぱいというだけで素晴らしい、素晴らしいものだ!!)
「っう、うぅ……サル先輩、ひどいですっ」
 乳首を尖らせながら訴える光秀に、胸部の素晴らしさに思考に耽っていた良晴はハッと我に返る。
(そうだった、今日は絶対に光秀の方からせがませてやるって決めてたんだ)
 何時も何時も光秀は、サル先輩は性欲までサル並みだから仕方ないですね、などと言って襲いかかる良晴を渋々受け入れるといった体を崩そうとしない。どれだけ躯が蕩けて喘ぎが漏れようとも、自ら望むことを口にしようとはしなかった。
 というより、良晴の方が堪え切れなくなりその肉体を貪るというのが常だった。しかし今日は違う。違う、つもりだ。
「酷いって、何が酷いのか全然わかんねぇけど?」
「っそ、そんな……ぅー、ううー!」
 熱が篭っているのか、もぞもぞと閉じた股の間に力を込めている光秀は、涙目で何度も唸った。訴えたいことは言わずとも知れている。しかし良晴にとっては、ここで退いてやる訳にはいかなかった。
「うー、じゃわかんねぇって」
「……っうぅ、……だから、その……です」
「ん? 何だよ、聞こえないって」
「…………っ、です!」
 顔を真っ赤にして訴える光秀の、掌がさ迷い良晴の太腿に触れる。
(っいや、だから、今はやばいんだって! 違うんだって、俺が切羽詰まってどうする!?)
「っっておい、こら、触るなって!?」
「だ、……っだって、サル先輩が意地悪しやがるからいけないんですよ!?」
「……あー、しょうがねぇだろ、お前いっつも嫌々っぽいし」
 無論、本気で彼女ら姫武将たちが抵抗したのであれば、良晴など到底敵いようがない。払い除けられないということは即ち、そこに許容があると見て取って間違いはないのだろう。
 しかし嫌がらない、ということと、望んでする、ということは、また別物なのだ。時折、今日のように肉欲の求めるままに性交渉を重ねているのだから、光秀とて求める所はあるのだろう。それを口にさせたい、と思う欲求は当然のものだと言えた。
(っていうか、そうじゃなきゃ俺の立つ瀬がねーってゆーか)
「俺だって無理強いはしたくねーしさ……」
「……っ最初にした時は、無理やりだったです!?」
「でもお前だって抵抗しなかったろ? だけど、あれが本気で嫌だったとしたら、悪いことしたよ。もう二度としねぇ」
 完全に嘘である。股間の一物は相変わらず猛っていたし、光秀の高揚した肌が目に焼き付いて我慢も限界を迎えようとしていた。いい加減折れろ、良晴の眼力に負けた訳でもないだろうが、俯いた光秀は良晴の太腿に乗せた掌をぎゅっと握りしめた。
「……たい、」
「ん?」
「したい……です。相良先輩と、したい」
(やっべ、かっわぇぇぇぇ!? も、もう我慢できねぇ!!)
「光秀、挿れるぞ!」
「っふぇ!? ちょ、そんな、いきなり……!?」
 ズボンの中で跳ね上がる欲望に正直に、良晴は急くままチャックを開け放つ。光秀の躯を後ろから抱き寄せ、トランクスから引き摺り出した肉棒を秘部に押し当てた。
「っいきなり、いきなりは無理ですっ!」
「嘘だろ、これだけ濡れてりゃ入るって」
「……っっひ、いあぁぁぁ!?」
 亀頭を押し当てた光秀の蜜壷は既にぬるぬると甘い液を吐き出している。そのぬめりを頼りに一気に剛直を膣内に突き刺せば、光秀の肢体は大きく後ろに仰け反った。
「っあ、やっや、です、サル先輩動いちゃ、動いひゃ駄目で……い、んっ、あああっ!」
「何だよ光秀、随分嬉しそうだな?」
「ちが、ちがうですっや、アアッ、やら、かき回しちゃやあっ、……っやらぁっ、ひゅうぅんっ、や、らのぉっ!!」
「嫌じゃねーだろ、ってか嫌なら止めるけど?」
「……っくっぅん、やめ、やらっ……アアッ、あひゃぁんっ!!」
 嫌だ嫌だと口で言う割に、光秀の肉壁は良晴が突き上げる度に大きくうねる。仰け反った後頭部が額に当たりそうになるのを避けながら、後ろから掴んだ腰を上下に揺すり続けた。
 所謂、背面座位の体勢なので腕に相当な負担が掛かるが、ここで力を抜いては負けだと良晴は歯を食い縛って光秀の体を持ち上げる。太腿に尻肉が食い込まんばかりにぱつりぱつりと激しく音を立てれば、呼応するように甘い声が光秀の口から零れた。
「っああ、やぁれ……やめひゃっ、やめちゃらめっでぇっ、すっ、うぅんっ」
「っふ、何だ、やめちゃ、ダメなのかよっ!」
「や、っなのにっ、やらのにぃっ、……ッアア、きもひ、きもひぃぃ、れすっ……っあ、はぁんっ、イッちゃ……っ!?」
「おっと……、俺はまだ、気持ち良くなって、ないぜ?」
 簡単に達しそうになる光秀の敏感な躯を慌てて引き剥がす。吸いつく膣壁は捲れ上がらんばかりに良晴に吸いついて来る。その生温かに後ろ髪を引かれながら膨れ上がった欲望を引き抜いて、力の抜けた光秀の肉体を畳の上に放った。丁度纏っていた着物が畳に広がり、それが丁度布団の如き役割を果たしていた。
 浅葱色の上にしどけない白の肢体が広がる。それは酷く官能をくすぐられる光景であった。
(ッア〜……もう、滅茶苦茶にしてやりてぇ……けど我慢、ここは我慢だ相良良晴)
 自らに言い聞かせる視線の先で、イキ損ねたらしい光秀は全身をひくつかせ蕩けた表情で良晴を見ている。至福のひと時だった。
「……ッ、せんぱ……さがら、せんぱぁい……」
「ん? どしたよ?」
「っあ、あ……きもちよく、気持ち良くするから……私も気持ち良くして欲しい……です、っひ……ッひゃぁあぁん、イイッ、っああ!?」
 そこまでが限界だった。目を潤ませた光秀の言葉を遮るように、良晴は自らの猛りを光秀の中に突き刺した。
 柔らかな太腿を持ち上げ光秀が嫌がるのも無視して左右に脚を押し開き、激しく抽挿する。ぬぷ、ぬぷ、絶頂を間近にして締め付けを増した膣内は、動く度に液を噴き出し卑猥な音を立てる。時に緩く、時に激しく、動けば光秀の顔は歪む。ぎゅっと目を閉じているものの、力の抜けた手で良晴の裾を掴んで来るのがいじらしい。
「ッあ、あ、あぁ、あぁんっ……ふ、ぁ、奥ダメ、だめです……っ!」
「奥が気持ち良いんだろ? 俺も気持ち良いからな……そろそろ、イクぞ?」
 額に浮かんだ汗が光秀の頬に落ちる。良晴が気持ち良いと言ったからか、何処か嬉しそうに微笑む光秀は、泣きそうな貌のままコクコクと頷く。背筋を這い上がる射精感を堪えながら少しでも長く光秀の躯を味わおうと、必死に腰を進めた。
(っう……あ、先っぽ子宮口に当たってきもちい……このまま出しちまいてぇが……っ)
「っう、ぁ……光秀の中、やべぇ……っく、イクぞっ!」
 ラストスパートを掛けようとした良晴が動きやすいように太腿から手を離した途端、光秀の脚はするりと良晴の腰に絡みついて来た。
「え!? うわ、やべぇって光秀! 離せ……」
「いい……っです、いいから、このまま中……して、欲しい、です……っ!」
 涎を垂らしながら訴える光秀に脳髄が焼き切れる音を聞いた、気がした。
「……っ出す、出すぞ光秀、中に……っはらめ、孕んじまえよ……っ!!」
「っひゃう、おひゅうぅ、……ツイク、イキましゅ、サル先輩に種づけされながらっ、イッちゃいます……ッ!!!」
 ぐっと子宮口に押し付けた肉棒が膨れ上がり、背を反らした光秀は絶頂に身を震わせる。膣が激しくうねり、締めつけられた良晴のペニスが脈打ちながら胎内に精液を吐き出した。

「……っは、はぁ、は……み、光秀、いいのかよ……中にとか……」
 全身汗まみれで力尽きた良晴は、光秀の身体に被さるようにして倒れ込む。繋がったままの互いが震える余韻に浸る背に、そっと回された掌が妙に愛しく思われた。
「……サル先輩が、いけないんです。……無理やりにするから……責任、取りやがれですよ?」
 涙でぐしゃぐしゃになった貌のまま、光秀は囁く。無理に作られた笑顔の光秀に、漸く、良晴は口付けを落とした。


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