Splash!

 逞しい大胸筋に見とれている内に、気付けば江のスカートは腰まで捲り上げられていた。
「え? 嘘、何でですか……ってここ、どこ!?」
「い、いや、ただの部室だけど……どうしたの? さっきまで君、素直に付いて来てたよね?」
 江の目の前に居る男が、驚いたように目を瞬かせる。赤い髪を逆立てた彼は、兄の通う鮫柄学園の先輩だと江は認識していた。水泳の強豪校であるその部で部長を張っている人物である。
 元来強面であるはずの彼は、今は眉を下げて困惑したように江を見ている。しかし混乱しているのは、江の方だった。 人の好さそうな顔で江を見ている男の、だがその手は正しく江の腰に回され、制服のスカートをたくし上げているのだった。
(えと、あれ、何で? ……私、うちの水泳部と共同練習を申込みに来て、それで……、)
 それで何で、部室に連れ込まれて、異性に下着を見せつけている羽目になったのか。以前に兄の所在を聞きに来た時にも、対応してくれたのはこの部長だった。その際にも僅かに感じていた彼からの圧は、今や明確な形として江の前に現れていた。
 鮫柄学園水泳部の部室は、流石強豪校というだけあって規模は大きい。ロッカーが見た限りだけで四列ばかり並んでいる。壁際にもびっしりとロッカーが並び、その一角に、彼女の背は押し付けられているのだった。
「あ、あのー、私……ご、合同練習が申し込めればそれで……し、失礼します……っ」
「おいおい、それは話が違うだろ? ここまで大人しくついて来ておいて、もう帰っちゃう訳?」
 江の目の前の部長は本気で困ったように首を振っている。その手は未だ江のスカートを捲ったままだ。
「わ、私、別にこんなことするなんて……っ」
(って、あぁっ!? 何て素敵な上腕三頭筋なの……!? そうか、私、これに見惚れて……)
 部長に話を持ちかけた際に、恐らくこの男は何らかの条件を付けて来たのだろう。しかし流石強豪校の選手なだけあって、かなり逞しい肉体をした男に見惚れている内に、こうして部室に連れ込まれてしまったのだ。筋肉フェチと言って差し支えのない江とはいえ、実に迂闊なことである。
(だ、ダメよ江……ここはさっさと抜け出さないと……でも……、)
 自然と頬が朱に染まるのは、白い清潔感のあるショーツが丸見えになっている所為だけではない。頭がボーっとする。何せ、男の裸の上半身が数十センチと離れていない目の前にあるのだ。男が呼吸をする度に硬く隆起した胸板が上下する。それを見るにつけて、江の思考は融けて行く。
 抵抗も儘ならない江の下半身に、男は無遠慮に手を遣って来る。冷たい右手が下着の上から股間を触りだせば、流石の江も冷静ではいられない。しかし江の局部を弄り出した男の腕に浮いた筋に気を取られて、力強く抵抗が出来ないでいた。
「……ッぁ、何して……ひぁんっ!?」
「あれ? 君、なんか濡れてない? おしっこかな?」
「っっし、死んじゃえっ……ッぁ、アっ……!!」
 男は下着の上から人差し指を江の陰部に沿って動かす。知らず緊張する局部を弄った指先が、探り当てた突起を強く押した。
 下着越しとはいえ、強くクリトリスを刺激され、江の身体はびくりと大きく震える。そこが性感帯と知った男は執拗に、リズミカルに突起を押して刺激を与えて来る。
(……っぁ、あ、何で……なんでこんな、知らない人に……弄られ、って、ァあっ、摘まないで……ッ!)
「っはは、君、クリトリス弱いんだね。完全に勃起しちゃってるよ。下着の上からでもわかる」
「っっや、だ……っヤだから、も……ひ、やぁ、んっ!!」
 頭上を仰ぎ、江の身体はびくんびくんと痙攣する。江とて年頃の女の子である以上、そういった興味は当然持ち合わせている。しかし自分で触るのも背徳感があり、恐る恐る擦るくらいのことしかしたことはない。中に指を挿れるなど以ての外だった。
 それなのに、今他人に良いように陰部を触られて、善がってしまっている。これで直接触れられでもしたら、一体どうなってしまうのだろう。思うだけで江の太腿が震え、下肢に湧き上がる切ない悦びに思考が纏まらない。
 江が振り払わないのを見て、男は調子に乗り下着の隙間から大胆にも指を滑り込ませて来る。濡れてる、と低く囁かれる通り、ぐちゃりと陰部から溢れた粘液が出す音に江の熱も高まっていった。
「気持ちイイんだろ? 君……ええっと、コウちゃん? だったっけ?」
 正直言ってしまえば、男の声は非常に良い。低く鼓膜に響く声で名を呼ばれると――しかも江自身が気に入らない“ゴウ”ではなく名乗った“コウ”で呼ばれると、背中の筋をぞくぞくと寒気にも似た快楽が走っていった。
(っぁ、あ……こんな状況で名前呼ぶなんて……っそ、そんな、大腿四頭筋で刺激しないでッ……っぁアンっ、)
「コウちゃん、胸も結構……ほら、制服脱いで脱いで?」
 男は指を陰部から外し、太腿を股の間に差し入れ上下させて来る。熱の籠った吐息を零しながら制服の上着を男が脱がそうとするのを、くらくらした頭では止めようもない。
「……っふ、ぁ……そっち、は……っ」
「へぇ、そんなに大きくもないけど、形はいいな。乳首も敏感だし」
 薄いワイシャツ越しに膨らむブラジャーを揉みしだき、尖った乳首の先を強引に摘んで来る。引っ張られたシャツのボタンが弾け飛び、覗いたブラジャーは薄ピンクである。まさかこんなことになるとは思わない江の、下着の上下が別であることについては、男は指摘しなかった。興味もないのか、カップをずらすと中から乳を引き出す。
 大きな男の掌にすっぽりと収まった胸は、指が食い込むくらいに強く握られている。そのままぎゅうぎゅうと指を順繰りに動かして揉み込み、それに飽いたら乳首を直接抓って来る。
「だ、め、……ひっぱっちゃ……っい、っぁ、あ、アアッ……い、ぅっく……っっひぁああんっっ!!!」
 太腿で擦り上げられた女陰が下着の中でひくひくと痙攣する。乳首とクリトリスと、同時に刺激され、仰け反る江の口を行き成り男は塞いで来た。
「ッイ、ふむっ、んんっ〜〜〜〜っ!!!??」
 無遠慮に口腔を弄る舌が、ねっとりと江に未知の快感を与えて来る。初めてなのに、と頭の何処かで嫌悪を示す己が居るも、最早江自身に自らを制する力はなかった。
 気付けば男の分厚い胸板に抱き留められている。口を塞がれ、乳首を捩じられ、突き上げる太腿がびしょ濡れの布地を擦りクリトリスを攻め立てる。上からも下からもくちゅくちゅ粘っこい音が江の耳までをも犯していた。
(……っふ、ぁ、だめ、キス……気持ち良すぎる……っん、っぁ、そこ、ぐりぐりしちゃ、ぁや……ダメ……っ、)
 大胸筋に包まれた江の思考は真っ白になって行く。次第にびくり、びくりと肉体が意思とは関係なく痙攣する。喉の奥で悲鳴にも似た嗚咽が出て、縋り付く先の男は、江の反応に喉の奥で嗤っているようだった。
「随分気持ち良くなっちゃってるみたいっだね? あーあ、もう脚がびっちょびちょだよ……ね、もうイキそうなんでしょ、“コウ”ちゃん?」
「っっイ、あっ、っぁは、やっぁ、ん〜〜〜ッッ」
 望んでいる名前を耳元に吹き込まれた途端、江の目の前に閃光が走る。自ら腰を振り、男の大腿に必死で擦り付ける割れ目から、勢い良く透明な液体が噴き出した。
「……っあんっ、ア、ッン、あ、っぁ、い、イイ……っん、あぁっ……ッふ、ぅぅ……っ」
 絶頂を迎え、余韻に浸る江の身体は完全に男に縋り付き、股から止め処ない愛液を漏らす。下着は疾うに下着としての役を失い、布に収まりきらなかった蜜がじっとりと男の腿を濡らしていた。
「へぇ……女の子が潮噴く所、初めて見たな」
「あ……ぁ、そんなの、知らな……い、」
「嘘吐いちゃ駄目だろ、こんなに濡らして……水着まで汚されちまったな」
 からかうように囁く男の声は、江が冷静になって聞いてみれば、随分と熱を帯びているように思える。余裕もないのだろう。江を突き放すように離れた男の眦は赤く染まり、興奮を露わにしていた。
「これは脱がないといけないだろ……っふ、君ばっか気持ち良いのは、不公平だよな?」
 男はいそいそと自らの腰に手をやり、水着を下し始める。そこからぼろりと、出て来た一物は上を向き、赤黒く屹立している。男のモノなど江は目にしたこともない。それなのに、目の前にある膨れた亀頭から透明な糸が伝っているのを見て、何故かきゅんと下半身が疼いた。
(あ、ぁ……こんなのっ、私、これから何されちゃうの……!?)
 口元に寄越されるそのむあっと立ち上る臭いに、江の躯の奥の奥が疼く。大腿四頭筋の狭間に揺れる生臭い一物に涎の溢れる口を、江は自ら近寄らせて行った。

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